ジュエリー職人が語る“想いを預かるものづくり-遺骨リング制作”

ペットという大切な家族を失った際、その存在を身近に感じ続けるための選択肢として「遺骨ジュエリー」が注目されています。しかし、大切な遺骨を預けて加工するという性質上、どのような工程や環境で作られているのか、不安を感じる方も少なくありません。

本記事では、実際に制作を手掛ける職人の視点から、遺骨ジュエリーが完成するまでの背景、そして遺骨を取り扱う上での管理体制や品質へのこだわりについて解説します。

単なる装飾品ではない「加工技術」としての指輪制作

遺骨ジュエリーの制作は、一般的な宝飾品の制作プロセスとは一線を画します。デザインの美しさを追求することはもちろんですが、最も重要なのは「遺骨を安全に、確実に納める」という工程です。

遺骨の状態は個体によって異なります。それぞれの状態に合わせて、樹脂(レジン)で封入するのか、金属の空洞部分に納骨するのか、最適な処置を判断するには専門的な知識と経験が必要です。私たちは、装飾品としての美しさと、遺骨を保護する機能性の両立を最優先事項として制作にあたっています。

日常生活に馴染む耐久性とグリーフケア

遺骨ジュエリーの役割の一つは、着用者が日常生活の中で故人(ペット)との繋がりを感じ、心の安定を得る「グリーフケア」の側面にあります。そのため、ジュエリーには毎日身につけても劣化しにくい耐久性が求められます。

外出先や仕事中など、あらゆるシーンで着用されることを想定し、衣服への引っかかりを抑えたデザインや、強度のある素材選定を行っています。日常の風景に溶け込み、ふとした瞬間に手元を見ることで心が落ち着く、そのような実用的な品質を目指しています。

遺骨を預かる責任と厳格な管理体制

ご依頼主様にとって最も懸念される点は「遺骨の取り扱い」ではないでしょうか。私たち職人にとって、お預かりした遺骨は素材ではなく、かつての家族そのものです。そのため、制作現場では厳格な管理ルールを設けています。

  • 個別の管理徹底: 他の個体との取り違えや混入(コンタミネーション)が物理的に発生しないよう、案件ごとに独立したトレーや保管場所を使用します。
  • 清潔な環境維持: 制作環境の清掃・整理整頓を徹底し、不純物の混入を防ぎます。

「間違いが許されない」という緊張感を常に持ち、全ての工程において確認作業を繰り返しながら進行します。

手仕事だからこそできる微調整と仕上げ

近年は3Dプリンターなどの技術も進化していますが、最終的な仕上げや遺骨の納入に関しては、職人の手作業が不可欠です。

特に遺骨を納めるスペースの微調整や、金属の表面仕上げは、機械任せにはできません。一つひとつ異なる指輪のサイズや形状に対し、手作業で丁寧に調整を行うことで、既製品にはないフィット感と、長く愛用できる品質が生まれます。この「ひと手間」こそが、オーダーメイドジュエリーの価値であると考えています。

家族の絆をつなぐ選択肢として

遺骨ジュエリー(メモリアルリング)は、ご自身用としてはもちろん、悲しみの中にいるご家族への贈り物として選ばれるケースも増えています。例えば、一つの個体から複数のジュエリーを制作し、家族それぞれが分骨のような形で身につけるという方法です。

私たちは、ジュエリーという「モノ」を作るだけでなく、それがご家族の手元に渡った後の「生活」を見据えています。技術と誠意をもって制作されたジュエリーが、これからの日々を支える一助となれば幸いです。